さて,様々な手法で,生体分子1分子の変位,力の計測手法を説明してきました.
しかし,重要なことをまだ説明していません.
それは,
得られた結果が果たして生体分子1分子によるものかどうか?
をどうやって,確認するのでしょう?
その結果って,2分子による結果じゃないの?
と質問されたときにどのように論破するのでしょう?
実際の実験の様子を示します.
これは,
二つのレーザースポット(ピンク)を使って二カ所にビーズ(青色)をトラップする
一本のアクチンフィラメント(黄色)を二つのトラップビーズで捕捉する
アクチンにあらかじめ張力をかけておく
ガラス上には,大きめのビーズ(緑色)を固定しおく
ガラス上にまばらにミオシン(赤)を固定する
捕捉したアクチンフィラメントを固定ビーズに近づける
固定ビーズ上のミオシンがアクチンフィラメントと相互作用し,アクチンフィラメントを一方向に変位させる
その結果,トラップビーズも変位する
この変位をナノ計測でとらえる
というプロセスを踏んで生体分子1分子の変位,張力を計測するのです.
この計測大前提は,
固定ビーズ上にあるアクチンフィラメントと相互作用できるミオシンは1分子のみ
というもので,その根拠は,
ミオシンをまばらに固定しているから
というものだけなのです.
これだけだと,根拠ではなく,希望,でしかありません.
では,どのようにして,自分の実験結果を自信を持って,
1分子による反応のものだ!
と言えるのでしょう?
そこで登場するのが,
ポアッソン分布
なのです.
では,次からきちんと説明していきましょう.